MQTTXをつかってMQTTでサクッと負荷をかけてみる
こんにちは、製造ビジネステクノロジー部の木村です。
製造業アドベントカレンダーの12/11 (水)の記事を投稿します。
サーバーレスの難しいところ
製造ビジネステクノロジー部では前身のCX事業部時代も併せて多くのIoT案件を取り扱ってまいりました。
その中でもサーバーレスを中心とした技術選定をしたものが数多くあります。
サーバーレスのメリットを活かすことで素早く開発を進めることができる一方で、
数多くのサービスを組み合わせることから、以下のような点はサーバーレス特有の難しさなのではないかと思います。
- サービスごとの連携が不適切で、パフォーマンスが出なかったり、スロットリングしやすい構成になってしまうことがある
- コストの見積もりが難しい。仮に算出しても自信が持てない
- クオータの管理が大変。中には上限緩和の手続きが難航したり、そもそもできないものもある
負荷試験をサクッと実施したい
さて、これらの問題点を早期に発見するために有効なのが負荷試験です。
ただ、機能開発で手一杯であったり、実施のハードルが高く感じられたりして、負荷試験は後回しにされがちです。
負荷試験の種類
負荷試験には種類があります。
参考: GrafanaのLoad testingの解説ページ
DeepLによる訳
スモークテスト: 最小限の負荷でシステムが機能することを確認します。
平均的な負荷テスト: 標準的なトラフィックでシステムがどのように機能するかを確認します。
ストレステスト:ピーク時のトラフィックでシステムがどのように機能するかを確認します
スパイクテスト:急激なトラフィックの増加に対してシステムがどのように機能するかを確認します。突発的なトラフィックの増加に対してシステムがどのように機能するかを確認します。
ブレークポイントテスト:トラフィックを徐々に増加させ、システムのブレークポイントを発見します。トラフィックを徐々に増加させ、システムの限界点を発見する。
ソークテスト: 長時間負荷がかかった場合にシステムが劣化するかどうかを検出します。
ストレステストより上位の本格的な負荷テストについては、攻撃ツール側にも相応の性能が求められるので、環境の準備が必要で手間がかかります。
また、負荷の大きさによっては事前にAWSへの連絡が必要だったりと手続き面でも何かとハードルがあります。(※ リンクはEC2が対象ですが、他のサービスを使用する場合でも何らかの形で事前に連絡しておくのがベターかなと思います)
一方で、冒頭で触れた難しい点に目処をつけることを目的にするならば、スモークテスト
または平均的な負荷テスト
を早い段階で行うことができれば、軌道修正も容易なのではないかと思います。
負荷試験のツール
HTTPによる負荷テストについては、多くの選択肢があります。
一方、IoTでよく使用されるMQTTにおいては、あまり選択肢は多くありません。
- ECS on Fargate環境でpaho mqtt clientを使用(参考: MQTTの負荷テストもバッチリ!!Locustを活用した分散負荷テスト環境の構築)
- mqtt-jmeter
いずれもインフラの準備など少し手間がかかりそうです。
今回紹介したいのは、表題にもあるMQTTXです。
MQTTXとは
MQTTXはオープンソースのMQTT Clientです。
デスクトップアプリ、CLI、Webアプリが提供されており、macOS、Linux、windowsで動作します。
詳しい使い方は以下で紹介されています
(参考: 独自スクリプトも実行できる!モダンでクールな MQTT クライアント「MQTT X」の紹介)
その中でも今回使用するのはCLIの中のbenchコマンドです
やってみた
主要なツールのバージョン
名前 | バージョン |
---|---|
aws-cdk | 2.171.1 |
aws-cli | 2.15.53 |
mqttx | 1.11.0 |
iot ruleとlambdaを作成
CDKで作成します。
IoT RuleとLambdaを作成します。
import * as cdk from 'aws-cdk-lib';
import { Construct } from 'constructs';
import * as iot from 'aws-cdk-lib/aws-iot';
import * as lambdaNodejs from 'aws-cdk-lib/aws-lambda-nodejs';
import * as lambda from 'aws-cdk-lib/aws-lambda';
export class AppStack extends cdk.Stack {
constructor(scope: Construct, id: string, props?: cdk.StackProps) {
super(scope, id, props);
const sampleFunction = new lambdaNodejs.NodejsFunction(this, 'SampleFunction', {
runtime: lambda.Runtime.NODEJS_22_X,
entry: 'functions/handler.ts',
handler: 'handler',
});
const topicRule = new iot.CfnTopicRule(this, 'SampleTopicRule', {
ruleName: 'SampleRule',
topicRulePayload: {
actions: [
{
lambda: {
functionArn: sampleFunction.functionArn,
},
},
],
sql: 'SELECT *, topic() as topic FROM "topic/test/+"',
},
});
sampleFunction.addPermission('IoTRuleInvocation', {
principal: new cdk.aws_iam.ServicePrincipal('iot.amazonaws.com'),
action: 'lambda:InvokeFunction',
sourceArn: topicRule.attrArn
});
}
}
デバイス証明書・秘密鍵・CA証明書の準備
thingの作成
$ export THING_NAME=sample-thing-20241204
$ aws iot create-thing --thing-name sample-thing-20241204
{
"thingName": "sample-thing-20241204",
"thingArn": "arn:aws:iot:ap-northeast-1:372082753702:thing/sample-thing-20241204",
"thingId": "2fa86daf-b2a7-47d7-94f2-1599bcf68bca"
}
証明書の作成
$ aws iot create-keys-and-certificate --set-as-active > keys_and_certificate.json
鍵類作成
$ jq -r '.keyPair.PrivateKey' keys_and_certificate.json > private-key.pem
$ jq -r '.keyPair.PublicKey' keys_and_certificate.json > public-key.pem
$ jq -r '.certificatePem' keys_and_certificate.json > device-cert.pem
環境変数
$ export CERTIFICATE_ARN=$(jq -r '.certificateArn' keys_and_certificate.json)
証明書とthingをattach
$ aws iot attach-thing-principal --thing-name $THING_NAME --principal $CERTIFICATE_ARN
ポリシー作成
$ export POLICY_NAME=sample-policy-20241204
$ aws iot create-policy --policy-name $POLICY_NAME --policy-document '{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Action": "iot:Publish",
"Resource": "*"
},
{
"Effect": "Allow",
"Action": "iot:Connect",
"Resource": "*"
}
]
}'
ポリシーアタッチ
$ aws iot attach-policy --policy-name $POLICY_NAME --target $CERTIFICATE_ARN
ルートCA取得
$ curl https://www.amazontrust.com/repository/AmazonRootCA1.pem -o AmazonRootCA1.pem
コマンド実行
シンプルにpublishする
mqttx bench pub \
--topic 'topic/test/sample-client' \
--message '{"msg": "hello from cli"}' \
--count 1000 \
--limit 0 \
--message-interval 100 \
--interval 10 \
--hostname 'xxxxxxxxxxxxx-ats.iot.ap-northeast-1.amazonaws.com' \
--port 8883 \
--key private-key.pem \
--cert device-cert.pem \
--ca AmazonRootCA1.pem
各種オプションの解説はドキュメントをご覧ください。
結果は以下のように表示されます。
❯ Starting publish benchmark, connections: 1000, req interval: 10ms, message interval: 100ms
✔ [10/10] - Connected
✔ Created 1000 connections in 4.0s
Published total: 32977, message rate: 98/s
publish内容を動的に変更したい時
topicを動的に変更する
--topic 'topic/test/%u'
といった形で変数を埋め込むことが可能です。
使用できる変数は以下のとおりです
%u
: username%i
: index%u
: client
message用のファイルを作成する
以下のようなファイルを作成する
{"msg": "no.1"}
{"msg": "no.2"}
{"msg": "no.3"}
コマンドを実行する
mqttx bench pub \
--topic 'topic/test/sample-client' \
--file-read payload.jsonl \
--split '\n' \
--count 4 \
--limit 0 \
--message-interval 100 \
--interval 10 \
--hostname 'xxxxxxxxxxxxx-ats.iot.ap-northeast-1.amazonaws.com' \
--port 8883 \
--key private-key.pem \
--cert device-cert.pem \
--ca AmazonRootCA1.pem
なお、上記の例だと、それぞれ行のメッセージを3つのクライアントが送ることになります。
3つのメッセージが4つのクライアントから送られるので、合計で12件のメッセージが送られます。
そのためclientごとに完全に異なるメッセージを送ることはできません。
最後に
MQTTでシンプルかつ簡単に負荷をかけることができるMQTTXのbenchコマンドの使い方について説明しました。
複雑なスクリプトを書かずともCLIベースで負荷をかけることができるため、
開発の早い段階で負荷試験を実施することで、システムのボトルネックやコスト面での決定的な見落としを見つけられる可能性が高まります。
ただし、動的にトピックやメッセージを変更するのはbenchコマンドだけでは限界があります。
また、ramp upができなかったり、負荷をかける時間を直接設定することはできなかったりと融通がききづらい部分もあります。
複雑なシナリオを実行したい場合は別のツールを選定した方がいいかも知れません。
以上、どなたかのお役に立てれば幸いです。